うつ病を発症してしまい休職してしまった看護師は、復職への不安や再発の恐怖を抱える日々を送っています。
看護師がうつ病になったら、まずは焦らずに休むこと、復職するときは無理せず働き続けるための環境調整が必要です。
休職、復職、転職までの知っておくべき情報4ステップを紹介しました。
うつ病になっても看護師は続けられます。
焦らず働き方を考えましょう。
看護師がうつ病になりやすい理由
うつ病になる看護師は全体の約5%と言われており、誰でもかかってしまう危険性のある病気です。
休職するほどでなくとも勤務時間の調整やお薬を飲みながら働いている方はたくさんいます。
不規則な勤務
質の悪い睡眠では心身の疲労回復は十分にできせん。
看護師は交代制勤務で「夜勤」「準夜勤」「遅番」「早番」など病院によってさまざまな勤務があります。特に夜勤は普段寝ているはずの時間に活動することになります。
人間は日中起きて活動をし、夜は眠くなって寝ます。
これは人間が生まれながらにして持っている「身体のリズム」があるのです。
夜勤による生活リズムの乱れは「交代勤務障害」と言われていて、日中に強い眠気に襲われたり、逆に寝るべきときに寝付けなくなってしまうなどの症状がみられます。
良い睡眠がとれずに疲労が溜まっていくと仕事でもミスが多くなり、気持ちの余裕もなくなっていきます。
対人関係
看護師は常に人と向き合って働かなければなりません。患者さんの命を預かるという責任の中、看護師にゆだねられる判断や処置もたくさんあります。
ミスをゆるされないという緊張感の中で働くことは大きなストレスとなります。
患者さんだけでなく、家族、医師、同僚の看護師、コメディカルなどさまざまな人と関わりコミュニケーションをとらなければなりません。
もちろんすべてがストレスになるわけではなく、コミュニケーションをとることで安心して仕事ができることもたくさんあります。
しかし、たった一人でもうまく関われない人がいるだけで、それは大きなストレスになります。
医療現場は患者さんを中心としたチームで仕事を行っています。
「クレームの多い患者や家族」「癖の強い医師」「厳しい先輩看護師」がいるからといって避けるわけにはいかないため対人関係ストレスはどんどん溜まっていきます。
その結果、いつの間にかうつ病を発症していたというケースも多くあります。
うつ病の症状
抑うつ状態
気分の落ち込みが強くなる状態です。
興味のあるものや好きなことに関心をむけられなり、漠然とした不安や悲しくなったりします。
そのほかにも、イライラする、自分を責めてしまう、寂しくなるなどネガティブな感情に支配されてしまいます。
意欲減退
さまざまな活動が億劫になってしまう状態です。
友達の誘われても誰とも会いたくない、家事ができない、何も食べたくないなどさまざまな行動ができなくなってしまいます。
睡眠障害
うつ病の身体症状として最も多くみられる症状です。
「寝つきが悪い」「寝ても何度も起きてしまう」「夜中に目覚め眠れなくなる」など、人それぞれでさまざまパターンがあります。
眠れない時間はとても長く感じ、うつ状態に伴うネガティブな感情に支配されやすくなってしまいます。
うつ病の治療をする上で、睡眠時間のコントロールや睡眠の質を向上させることが脳を休息や身体のリズム調整につながるので、もっとも重要な項目と言えます。
うつ病になったら
退職はすぐに考えないでください
うつ病になってしまった場合、「職場に行くのが怖い。」「辞めてしまったほうが楽になれる。」「このまま休んでも職場に迷惑がかかってしまう。」のような考えから退職を考えてしまうかもしれません。
しかし、うつ病発症で一番調子の悪い状態のときに大きな決断をすることは絶対にしないほうがよいでしょう。
この時期では、職場やかかりつけ医と相談して長期休暇や休職をとれるように相談して職場から離れることを考えましょう。
うつ病の回復は時間がかかる
うつ病はしっかり治療すれば治る病気ですが、再発する可能性もあり、上手に付き合っていかなければなりません。
内服の継続、生活リズムが乱れないような調整など今後も上手にうつ病と向き合いながら生活していくことになります。
まずは、うつ病を重症化させないためにも、ストレスの原因と考えられる職場から離れることが大切となります。
看護師としてさまざまな責任がある中で、休むという決断をすることはとてもつらいことだと思います。
しかし、うつ病になった時、優先すべきは自分の体です。周りの人でなく自分を大切にする期間だと思って受け入れましょう。あなたは十分がんばったのです。
仕事を再開できるまでの休職期間は、短くて一か月、長ければ1年間など重症度によって期間はさまざまです。
発症し休職してすぐには、判断力が低下しており、休むことに引け目を感じて活動をしなければならないなどと考えてしまうかもしれません。
しかし、冷静に自分を見つめ直せるようになるまでしっかり休養を取りましょう。
休職のための手続き
多くの場合、まずは心療内科を受診し、休職が必要であることを記載された医師の診断書を発行してもらう必要があります。必要な療養期間もこの時記載されます。診断書を職場で確認してもらい、休職の手続きをとることになります。
職場によって必要な書類があると思いますので、師長に確認し、規定に従って提出します。
休職中でも、傷病手当金を受け取ることで給料の2/3のお金が入ってくることになるので、生活を成り立たせることは可能だと思います。
就業規則を職場の事務課などに確認しながら必要書類を提出してください。
休職中の過ごし方
まずはしっかり眠れるようになりましょう
うつ病になってからの毎日の過ごし方として、まずは十分な睡眠をとって、バランスの良い食事をとることが大切です。
生活リズムを整えることも大切なことですが、うつ病になってすぐの時期ではなにもしたい気持ちにならないでしょう。
そんなときには無理をして活動をしようと頑張る必要はありません。しっかりと睡眠時間をとって脳を休ませることが大切です。
途中で起きてしまったり、なかなか寝付けなかったりもするかもしれませんので、医師と相談して必要であれば眠れるようになるまでの間だけでもお薬を飲むことも必要になるかもしれません。
睡眠薬はあまり頼りたくないかもしれませんが、眠れない日々が続いている場合は、医師と相談しながらお薬調整することをおすすめします。
食事もとりたくない日があるかもしれませんが、食べられるものを食べてゆっくり自分の身体の調子を整えていきましょう。
生活リズムを整えましょう
夜間眠れるようになってきて、少しずつ日中の活動ができるようになってきたら、簡単な家事などから少しずつやっていきましょう。
うつ病になると、疲労感や倦怠感などを感じやすくなるため、無理はせず、できそうなことからはじめていくのが良いでしょう。
日中の活動できる時間が増えてくると徐々に生活リズムを取り戻すことができるようになるので、焦ったりするのは逆効果ですので、自分の心と体調に素直に向き合いましょう。
看護師として働き続けるために
復職する場合
看護師として復帰する場合にはどのようなことが大切なのでしょうか?
ここでは、復帰する際に重要なことや注意すべきことを紹介します。
復職が可能か相談しましょう
復職のタイミングを決めるためには、まずかかりつけ医に相談することをおすすめします。
うつ病の回復具合などを踏まえて、客観的に判断してもらう必要があるからです。
もちろん、療養中に支えてくれた家族や友人などにも相談して客観的な意見をもらうことも大切です。
医師や家族・友人などからの意見を踏まえて、自分自身でも「復職しよう。」と思えたら、職場の上司へ復職したいこと、医師の許可が得られたことを伝えましょう。
職場復帰可能と判断された診断書の提出を職場から求められる場合もあるので確認しておきましょう。
職場の上司とともに職場のフォローアップ体制や就業制限・通勤訓練・試し勤務(リハビリ)などの必要性も検討して、無理のない体制で復帰できるように相談しましょう。
- 【就業制限】:残業・夜勤の制限など
- 【通勤訓練】:自宅から職場付近まで移動し、職場付近で一定時間過ごしてから帰宅する
- 【試し出勤(リハビリ出勤)】:職場復帰の判断を目的として、職場へ試験的に一定期間継続して出勤する
異動願いについて
複数の診療科がある病院で働いている場合は、異動願いを出すことで環境を一新してみるのも一つの選択肢です。
もともとのストレス原因が、人間関係によるものである場合は異動によって改善される場合も多いからです。
看護師を辞めることや他の病院へ転職することは、全ての環境が変わってしまうため不安が強くあると思います。
そのため、まずは異動できないか上司へ相談してみてはいかがでしょうか。
自分への期待値は上げ過ぎない
うつ病による休職は、長期に渡ることも多いので、体力も気力も自分が思っている以上に無くなっています。
それでも「まわりに迷惑はこれ以上かけたくない」「早く元通りに働けるようにならないと」と焦って負担をかけすぎてしまうかもしれません。
しかし、自分がいくら焦っても職場の仕事内容やペースに慣れていくためには時間が必要です。
最初のうちは半日でもぐったりと疲れてしまうと思います。
そんなときに、「なぜこんなこともできないんだ」と自分を責めてはいけません。
できなくて当たり前で、時間がかかってしまうのは当たり前のことだからです。
良い意味で自分へ期待値は働く前から下げておくことが大切です。
逆に、半日でも頑張れた自分を精一杯褒めてあげて下さい。成功体験の積み重ねが働ける自信へと繋がっていくはずです。
お薬を飲みながら働く
職場復帰できたらイコールうつ病が治ったというわけではありません。
可能な職場環境を整えても、自分自身のストレス耐性が高まったわけではないため、うつ病が再発しないためにお薬の内服を続けなければならない場合も多くあります。
また、自己判断で辞めてしまうと離脱症状が出てしまい、かえって心身に不調をきたしてしまう場合があります。
抗うつ薬などは依存性や習慣性・副作用があり、あまり続けたくないと考えるかもしれませんが、辞めたい場合も減らしたい場合も医師へ相談して一緒に決めていくのが良いでしょう。
- 【離脱症状】:薬をしばらく継続して使用していると、身体の中に薬があることが当たり前になります。その状態で薬の量を減らしたり、中止してしまうと、身体にいろいろな不調をきたすこと
転職を考える場合
うつ病を発症してしまった場合、復職ではなく再就職先を探すのが最も効果的なのかもしれません。
しかし、安易な職場選びはうつ病の再発の原因になってしまう可能性があるので慎重に考える必要があります。
転職先の選び方
もっとも多くの看護師が属しているのが病棟勤務だと思います。
病棟勤務は医師、同僚看護師、コメディカル、患者、家族など様々な人と接する部署で、日勤と夜勤の不規則な勤務もあります。仕事量が多く、看護師が不足している場合、無理な勤務シフトをこなさなければいけなくなるかもしれません。
もっと看護技術を積むために、設備の整った大学病院や大きな総合病院などで働きたいと考えるかもしれません。
しかし、激務で自分のペースで働けない場合、うつ病再発の原因となってしまうかもしれないので、余裕を持って働ける職場を選ぶのがよいでしょう。
自分のスキル、職場の看護方針、雰囲気などの情報を整理して、自分が職場環境に無理に合わせなくてもよい場所を探す必要があります。
重症の患者が多く、救急車の受け入れ台数も多い大規模病院だけではなく、重症の時期を脱した患者が療養する地域の慢性期病院を選んで、長く働けて看護技術も身に付けられる環境に転職を考えるのもよいです。
病棟勤務をやめて、健診センターや血液センターなどで看護の基礎スキルを活かして働くというのも選択肢の一つです。
同じ流れの業務でやることがある程度決まっていて、タイムスケジュール通りに業務が進めれて、落ち着いて仕事ができます。
大切なことは、自分が無理しすぎずに働ける環境にいられることです。
うつ病であることは転職先に伝えるべきか
うつ病で休んでいた事実を隠して、無理をして頑張って働いて病状が悪化するのは、自分にとっても職場にとっても良いことではありません。
そのため、採用面接の時点で新しい職場に伝えるべきです。
自分自身の病気の理解を得てもらう為、「うつ病になった原因」「仕事復帰の許可を医師が得ていること」「配慮してもらいたいこと」など伝えられることはできるだけ話しておいた方が良いでしょう。
まとめ
看護師はハードな仕事なので、うつになる方も一定数います。
うつだと診断された場合には、早めに休職したほうがいいでしょう。
また、復帰する場合も転職する場合でも、無理をしない働き方ができるように配慮してもらいましょう。