「上司にパワハラされてうつ病になった」
「昔は気づかなかったけど、よく考えたら原因はあの時の発言や叱責はパワハラに違いない!」
「もう大分時間が立ってしまったけど、パワハラで訴えることは出来るのかなぁ」
などと思っている方もいるでしょう。
この記事では、昔受けパワハラはいつまで訴えることができるのか、また昔の証拠を集めて訴えるための手順を解説していきます。
パワハラを訴えたい!訴えられる期限はいつまで?
パワハラを訴える場合、通常は民法709条の「不法行為に基づく損害賠償請求」を使用することになります。
この有効期限についてですが、民法724条で定められている期限となる「損害及び加害者を知ったときから3年」となります。
つまりパワハラを訴えるなら期限は3年間以内ということですね。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用:民法709条
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
引用:民法724条
犯罪などの重い刑であれば期限は数十年や期限なしと長いものになりますが、パワハラのようにそこまで重くない訴えについては、3年から5年程度が一般的となっています。
あまり遅くなってしまうと時効となるので、訴えたいと考えている人は注意しておきましょう。
注意!期限は「 損害及び加害者を知ったときから3年」
ここで注意するのが、パワハラの被害を受けてから3年間の間ということではなく、
「損害及び加害者を知ったときから3年」
と定められているところです。
実際にパワハラの被害を受けたときが5年前であっても、
- 自分の体への異常を知った時
- 加害者が原因だと知った時
が3年の間であれば訴えることが可能になります。
例えばパワハラを受けてうつ病などの精神障害を患った場合は、それが継続的に続いている場合がほとんどだと思います。
継続的な被害を最後に受けたときから時効を計算することも出来るので、期限内に訴えることができる可能性は多少上がると言えますね。
精神的被害の場合はあとから発症する事も多いので、それに気づいてから時効を計算するということが出来ます。
人の生命又は身体を害する不法行為の期間が3年→5年に!
ちなみに令和2年の4月1日から民法724条が改善されることになりました。
その内容がこちらですね。
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
引用:民法724条の2
「不法行為に基づく損害賠償」について、「人の生命又は身体を害する不法行為」については、期限が3年から5年へと変更されました。
つまり体に損害が出るような行為をされてしまった場合には、期限が通常の3年ではなく5年に延長されるということです。
ただここで難しいのが、パワハラなどの被害の場合「精神的な被害」を受ける場合が多いことです。
例えば「精神的にショックを受けた」「気分が落ち込んだ」などに留まってしまうことですね。
生命または体を害するというのが、うつ病などの精神的な被害に留まってしまった場合はこれに当てはまるかどうかは難しくなってきます。
例えば発症したうつ病によって手足がしびれるなど、実際に体にまで影響が出ている場合は当てはまる確率が高いです。
しかし、「気分が落ち込む」「ショックを受けた」などの精神的な被害に収まっている場合は、民法724条の2に当てはめるのが難しいです。
そのため、これまで通り3年以内となってしまう可能性が高いでしょう。
もしも被害が想像以上に大きく、体に損害が出ているような場合には、改正された法によって期限を5年とすることが出来ます。
しかし精神的な異常にとどまっている場合は、これまで通り3年となってしまうので注意しておきましょう。
パワハラを訴える手順について
実際に訴えたいと考えてはいるけど、パワハラを訴えるにはどういった手順を踏めばいいのでしょうか?
実際の流れについて解説していきたいと思います。
そもそもパワハラとは?
2020年6月にはパワハラ防止法が設立されましたが、そこではパワハラを次のように定義しています。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの(精神的・身体的苦痛を与える言動)
これらに当てはまるような行動であり、なおかつ、
- 身体的な攻撃・・・暴行・傷害
- 精神的な攻撃・・・脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
- 人間関係からの切り離し・・・隔離・仲間外し・無視
- 過大な要求・・・業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
- 過小な要求・・・業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
- 個の侵害・・・私的なことに過度に立ち入ること
これらに当てはまっているかどうかを考える必要があります。
自分が受けた被害について、今一度確認しておきましょう。
パワハラを止めるように相手を説得する
まずはパワハラを止めるように相手を説得することですね。
もしこちらがパワハラのような扱いをされたとしても、相手はそれをパワハラと認識にしていないことも多いです。
一度直接話しをして、自分の気持を伝えることが重要になります。
もしもこれ以上同じような行為を続けるようなら、こちらに訴える意志があることも伝えましょう。
相手方も問題を大きくしたくないことが多いですし、場合によってはこれで辞めてくれる可能性もあるでしょう。
会社の人事部や労働組合などに伝える
もし本人に直接言っても聞かないようであれば、会社の人事部や上層部、労働組合などに伝えましょう。
上司にパワハラされたのであれば、さらに上の機関から注意してもらうことにより、絶大な威力を発揮する場合があります。
会社側としても訴訟などの問題に発展すれば、大きな被害を受けることになります。
パワハラした相手にしかるべき処置をとってくれる場合があるので、こちらも効果的な方法です。
この時は自分がどんな事をされたか、正確にわかるようにメモなどを残し、あらかじめ情報を整理して、わかりやすく説明できるようにしておきましょう。
弁護士に相談する
それでも改善しないようであれば、弁護士に相談しましょう。
パワハラなどの労働問題に詳しく、自分と性格が合いそうな弁護士を選ぶことをおすすめします。
訴える意思があることを伝え、行動に移していきましょう。
訴える費用はどれくらいかかる?相手から取れる金額は?
パワハラなどの問題で訴える場合、弁護士費用、裁判費など合わせて約数十万円かかるようです。
ただこれは内容や弁護士によるので、おおよその相場ということになります。
またパワハラなどで取れる慰謝料ですが、こちらは50万円~100万円ほどが相場となっているようです。
他の問題に比べるとやや少ないですが、自分が受けた被害によってはもう少し上がる場合もあります。
こちらもこのあたりはケースバイケースとなってきます。
ただ基本的に訴えることによって金額面では損する可能性が高いので、訴えるのを辞める人も多いようです。
しかし金額では損をしても、相手に社会的制裁を加えられるという意味はあるため、そちらを選んで訴える人もいらっしゃるようです。
昔のパワハラ内容、訴える材料はどうやって集める?
パワハラを訴える場合には、きちんとした証拠があるかどうかで成功率が変わってきます。
しかし時間がたった過去のパワハラを訴える場合は、証拠集めが難しくなるのが難点です。
パワハラで訴える場合の証拠ですが、主に使われるものがこちらになってきます。
証拠となる効力が強いもの
- 相手とのやり取りを録音したICレコーダー
- 医師の診断書
- 写真や動画
- メールやLINEなどの画像
- 日付や内容など詳細に書いた日記
証拠となる効力が弱いもの
- 自分自身の証言のみ
- 知人の証言のみ
- 簡単なメモ
過去のパワハラを訴えるのであれば、写真や動画、メールやLINEなど長期に置いて保存できるものが有効活用しやすくなってきます。
携帯やスマホ、社内のメールなど、過去の記録があればさかのぼって探していきましょう。
もしも日記などに内容を残していれば、こちらも有効な証拠となります。
ただし簡単なメモ書きなどでは効力が薄くなってくるため、できれば日付や内容まで詳細に書かれたもののほうが証拠として強くなります。
もしもパワハラを受けた場合には、証拠として残すために、その時の様子や発言などを細かく日記などに残しておくことをおすすめします。
また効力としては弱いですが、知人の証言なども証拠となります。
パワハラをするような人物の場合は、他の人も同じような思いを抱えていたり、同じようなシチュエーションを見ている場合が多いです。
複数の人から証言を集めることも有効な証拠に出来るので、周りの人に相談してみるのもいいでしょう。
パワハラを受けているけど相談できる人がいない場合は?
企業ではパワハラをする人物は社内で強い権力を持っていることが多いです。
その人に逆らうのを恐れて、社内で協力してくれる人がいないこともあるかもしれません。
相談出来る人がいなければ、精神的につらい立場になってしまうでしょう。
近年ブラック企業によるパワハラの相談は増えており、それらによる精神疾患が大きく増えています。
WHO(世界保険機構)では、2030年頃には「うつ病などの精神疾患」が「健康な生活に影響を及ぼす疾病」の第1位になると言われており、今後も増えていくと予想されています。
精神疾患系の病気は一度かかると治るのが難しく、再発して継続していくパターンが多いです。
もしも自分がそうなってしまいそうな場合、またはすでにそうなってしまった場合は、早めの処置を取ることが大切です。
会社の人間関係や仕事内容に問題があるのであれば、早めに退職した方が後々の事を考えると得策です。
昔と違い終身雇用は崩れ転職は当たり前になってきているので、ためらう必要もないです。
とは言え、中々会社を辞める勇気が持てない、退職を切り出せない・・・と言う人もいると思います。
そんな人におすすめなのが「退職代行サービス」ですね。
「退職代行サービス」を利用すれば、嫌な上司とやりとりをすることなく、会社を辞めることができます。
全ての手続きを「退職代行サービス」に任せることができ、退職届の提出や貸与品の返却も郵送ですることが可能です。
パワハラで辞めたいけれど自分で言う勇気が出ない人は検討してみても良いでしょう。
下記の記事では退職代行「NEXT」について詳しく解説しています。
ぜひご覧ください。
まとめ
今回はパワハラを訴える期限について解説しました。
過去に受けたパワハラを訴えられる期限は3年から5年程度です。
しかし、証拠が残っていなければ訴えても慰謝料を勝ち取ることは難しいでしょう。
複数の人から証言を集めることも有効な証拠になるので、過去のパワハラを訴えたい人は、周りの人に相談してみましょう。
また、退職を検討している場合は、転職先を決めておくとスムーズに退職できます。
下記の記事では年代別の転職成功のポイントを解説しています。
ぜひご覧ください。