転職すると前職の会社から発行された源泉徴収票を提出するように求められます。
ただ、手元になくて提出できず、期日に間に合わない可能性が出てくるとこともあるでしょう。
どのようなときに本当に間に合わずに困ってしまうことになるのでしょうか。
この記事では具体的なケースと、転職先への提出が間に合わなかったときの対処法を紹介します。
源泉徴収票を転職先で提出するのはなぜか
そもそも源泉徴収票を転職先に提出しなければならないのはなぜなのでしょうか。
何の目的で転職先の会社が源泉徴収票を出すように求めているのかを理解しておきましょう。
年末調整をするため
転職先の会社が源泉徴収票を期日に間に合うように提出するように強く要求しているのは年末調整をするための書類として必要だからです。
会社では天引きとも呼ばれる源泉徴収を毎月の給与からおこなっています。
社員が納めるべき税金を会社がまとめて納税するために、予め給与から差し引いています。
源泉徴収によって過剰に徴収していた分を返還し、不足分の徴収もおこなうのが年末調整です。
年明けに納税をする必要があるため、12月の給与の支払いに合わせて年末調整が実施されます。
業務としては早ければ10月後半、遅くても11月後半には年末調整の計算をおこないます。
そのため、転職先への源泉徴収票の最終提出期限は11月頃というのが一般的です。
前職の給与を知る目的もあり得る
年末調整は雇用者の義務なので転職先に源泉徴収票を提出しなければならないのは年末調整に必要だからなのは事実です。
しかし、11月にならずとも入社後すぐに提出するように要求される場合もあります。
転職先の会社が前職の給与を知りたいと考えていることもあるからです。
転職活動をしているときに前職の給与を聞かれることがよくあります。
その金額が正しいかどうかを見極めるための資料としても有用なのが源泉徴収票です。
前職の給与額に基づいて採用時の基本給を決めることが多いので、虚偽の内容ではなかったかを確認したいと考えるのはもっともなことでしょう。
転職先によっては少なくとも試用期間中に源泉徴収票を手に入れて確認しようとしている可能性があります。
転職したときに源泉徴収票が手に入るのはいつか
源泉徴収票は転職後、いつ手に入れられるのでしょうか。
前職の会社から源泉徴収票は発行されますが、必ずしも退職のタイミングで手渡されるわけではありません。
間に合わない可能性があるかどうかを判断する上でも役に立つので原則を理解しておきましょう。
退職後一ヶ月以内に発行されるのが原則
源泉徴収票は退職した人に対して雇用者が発行しなければならない義務を負っています。
その発行のタイミングとして退職後一ヶ月以内が原則になっています。
所得税法による交付義務があるので、特に申請をしなくても発行してもらえるのが基本です。
ただ、スタートアップベンチャー企業のように退職者が出るのに慣れていない場合には義務があるのを失念していることもあります。
担当部署に問い合わせをして発行を促さないと手に入らないこともあるので注意しましょう。
転職先に直接送付されることもある
源泉徴収票は退職した人が直接雇用者から受け取るのが原則です。
手渡しのこともありますが、郵送での送付も認められています。
しかし、便宜を図る目的や、慣れないために原則を知らない関係で、直接転職先に送付されることもあります。
転職先から源泉徴収票の提出を求められているのにいつまでも届かないとやきもきしてしまうでしょう。
しかし、問い合わせてみたら実はもう転職先の担当部署に届いていたということもあり得ます。
前職の担当部署には一度は確認を入れて、源泉徴収票の交付がどのような段取りになるかを理解しておくのが賢明です。
源泉徴収票が間に合わないケース
現実的な問題として、どのようなケースで源泉徴収票の提出が間に合わないのでしょうか。
転職先の年末調整に間に合わないケースとして典型的なパターンが3つあります。
期限に間に合うようにするために何ができるかもあわせて確認しておきましょう。
前職の会社からの発行が間に合わない
前職の会社からの源泉徴収票の発行が期日までに間に合わないのがよくあるケースです。
一ヶ月以内の発行なので10月中旬くらいまでに退職していれば間に合うでしょう。
しかし、11月に入ってからの退職では発行が遅いと12月になってしまいます。
この場合には発行が間に合わずに提出できないことがあるのを想定しておきましょう。
なお、前職の会社の担当者が年末調整に必要な資料としてすぐに送らなければならないと承知しているとは限りません。
ギリギリになりそうな場合には早く交付して欲しいことを伝えておくのが大切です。
前職の会社が発行義務を怠慢している
源泉徴収票が前職の会社から発行されずにずっと待っていたために間に合わないこともあります。
前職の会社が源泉徴収票の発行義務を怠っていて、退職後一ヶ月以内に交付されない場合もあるので注意が必要です。
電話やメールなどでまずは連絡して発行を急いでもらうのが適切です。
それでも対応してくれない場合には内容証明郵便を送って請求しましょう。
なお交付してもらえないのであれば、税務署に源泉徴収票不交付の届出書を提出するのが打開策です。
源泉徴収票交付の義務を怠慢した事実を税務署が把握し、行政指導をして発行手続きを進めてくれるでしょう。
ただ、時間がかかるのは確かなので、税務署に届出をしたタイミングによっては提出が間に合わないこともあります。
前職の会社が源泉徴収票の交付を怠りそうな気配があったら早めに行動を起こすのが大切です。
前職の会社が倒産してしまった
前職の会社が倒産してしまうと源泉徴収票は発行されません。
担当部署がそもそもなくなってしまっているので退職後に発行できないからです。
当然ながら転職先に提出を求められても困ってしまうでしょう。
この際にも誠実な形で倒産している会社なら対応策があります。
破産管財人に源泉徴収票の交付を求めることが可能です。
会社が倒産するときには破産管財人が選定され、倒産してしまった後に必要になる事務手続きを担当します。
連絡を取れば速やかに源泉徴収票を発行してもらえるでしょう。
ただ、破産管財人は必ず選任されるわけではなく、選任されていても連絡先が周知されていないこともあります。
このような際には源泉徴収票を手に入れられないので、転職先に事情を説明するしかありません。
源泉徴収票がないと転職先では年末調整をできませんが、後述のように確定申告出対応することが可能です。
源泉徴収票を紛失してしまった
前職の会社から源泉徴収票は発行されたけれど、紛失してしまって提出できない場合もあるでしょう。
転職で引っ越しをしたときにどこにしまったかがわからなくなったり、前職の関連書類は不要だと思って捨ててしまったりしたのが原因で紛失する場合があります。
間に合わない原因が自分のミスだとはいえ、何とかして打開したいと考えるのがもっともなことでしょう。
源泉徴収票を失くしてしまったときには前職の担当部署に再発行を依頼すれば問題ありません。
通常、電子書類として源泉徴収票を作成しているので、連絡するとすぐに再発行してもらえます。
再発行に手数料はかからず、もし請求されたとしても郵送料の実費だけです。
紛失してしまったと気付いたときにすぐに連絡して、速達で送ってもらえば翌日には手に入るでしょう。
間に合わないと思っていた状況から挽回するのは簡単なので、紛失したのがわかったら速やかに再発行の手続きを進めましょう。
転職先に源泉徴収票を提出できない場合の対処法
やはり源泉徴収票の発行が間に合わず、転職先から求められている期日までに提出できないという場合もあります。
間に合わないときにはどのような対処ができるのでしょうか。
提出期日を担当部署に交渉する
まずは転職先の担当部署に相談して提出期日を遅らせてもらいましょう。
入社後すぐに提出を求められているケースでは、年末調整ではなく給与額の確認が目的だと考えられます。
11月頃まで提出期限を遅らせられるかどうかを聞いてみるのが大切です。
11月くらいに退職して入社した場合には担当部署が年末調整業務をおこなうタイミングには間に合わないかもしれません。
しかし、全社員の処理とは別枠で対応してくれる可能性があります。
前職の会社から源泉徴収票がまだ交付されていないことを伝えて、期日を延ばしてもらいましょう。
大抵の会社では11月末日までなら待ってもらうことができます。
会社によっては12月の給与明細書を作成する段階まで待ってくれることもあるので交渉してみるのが重要です。
年明けの2月~3月に確定申告をする
実は源泉徴収票を転職先に提出できず、年末調整をしてもらえない場合には確定申告をすれば良いだけです。
確定申告は自分が納めるべき税額を計算して申告し、正しい金額の納税をする手続きです。
2月の半ばから3月の半ばに確定申告の期間が設けられているので、それまでに源泉徴収票を手に入れて確定申告をしましょう。
前職の会社が倒産して源泉徴収票が手に入らないケースでは、給与明細書を使って確定申告をすることも可能です。
確定申告は前年の1月から12月にかけての所得に対しておこなう点に留意する必要があります。
手間がかかるのは確かですが、転職した年だけはやむを得ないと考えましょう。
他の収入がある場合や特別な控除があるときも確定申告が必要
確定申告は転職先への源泉徴収票の提出が間に合った場合でも必要になる場合があります。
年末調整では副業収入などの他の収入については対象になりません。
副業や投資などで損益が発生している人は確定申告をして納税する必要があります。
また、医療費控除や寄付金控除などを適用したい場合にも確定申告をしなければなりません。
高額の医療を受けて10万円を超えたときや、ふるさと納税をしたときなどには控除を受けられます。
社会保険や住宅ローンなどの控除は年末調整で対応してもらえますが、特別な控除を受けるときには確定申告が必須です。
いずれにしても確定申告をする場合には、源泉徴収票が間に合わなくても良いという考え方もできます。
なお、年末調整をしてもらうと源泉徴収分の計算の手間が省けるメリットはあります。
源泉徴収票を提出できなくても一大事になるわけではありませんが、手間を減らせることには留意して可能な限り源泉徴収票を間に合わせるのが賢明です。
確定申告をしないとどうなるのか
源泉徴収票を転職先に提出するのが間に合わずに年末調整をしてもらえなかったときに、確定申告をしなかったらどうなるのかが気になる人もいるでしょう。
確定申告をしないと損をするか脱税になってしまうので注意が必要です。
もし源泉徴収によって多めに天引きされていたとしたら、確定申告をすると過剰な分が戻ってきます。
つまり、確定申告をしないと還付金をもらえないので、所得税を払い過ぎて損をすることになるのです。
一方、より大きな問題になるのは源泉徴収された分では所と億税をまかなえていない場合です。
税額に不足がある場合には確定申告をして追加で納税しなければなりません。
年末調整では不足分を12月の給与から差し引いて対応していますが、源泉徴収票の提出が間に合わなかった場合には自分で納めないと脱税になります。
税額が不足していることが発覚すると不納付加算税と延滞税が課されて金額が増えます。
税務署からの通知を受けた時点で10%の不納付加算税が加わり、遅れていた日数に応じて延滞税が加算されるのが基本原則です。
このような問題を引き起こさないためにも、源泉徴収票の提出が間に合わなかったときには確実に確定申告をするのが大切です。
まとめ
転職先が要求している期日までに源泉徴収票が間に合わないことはしばしばあります。
転職先としては年末調整をするのに必要な書類なので、業務をスムーズに進められるように早めに提出して欲しいと考えています。
まずは期日に間に合うように前職の会社に連絡するなどの対応を取りましょう。
遅れそうなときには早めに転職先の担当部署に連絡して期日を延ばしてもらうのが大切です。
それでも間に合わないときには確定申告をすれば問題ありません。
源泉徴収票が手に入らなかったとしても給与明細書があれば確定申告は可能なので、忘れずに手続きをしましょう。