念願だった看護師になれた喜びも束の間、社会に出て看護師として実際に現場で働いてみていかがでしょうか?
理想と現実のギャップや人間関係などに悩んですでに「辞めたい」と感じている看護師1年目の方もいるのではないでしょうか。
しかし、いざ辞めようか悩んだ時「看護師になったからには、まず3年は頑張ってみて。」と周囲から止められ、今後どうすればいいのか悩んでいる方もいるかと思います。
そこで今回は看護師人生の中でも特に悩みの多い看護師1年目の乗り切り方や転職を成功させるポイントについてご紹介していきます。
看護師1年目の離職率は?
出典:日本看護協会
毎年新卒採用者の約9割は臨床の基本を学ぶために「病院」を就職先として選ぶ傾向にあります。
そして、病院に就職した新卒採用者の離職率を見てみると、2019年度は全体の 8.6%で、前年度比で0.8 ポイント増加となっており、人数でいうと100人のうち8人の新卒者が退職していることとなります。
あくまでもこのデータは2019年度のものであり、近年は新型コロナウイルス感染症の影響によって、より一層新人看護師の離職率が増えていると予測されています。
ではなぜ看護1年目に「辞めたい」と思うようになるのか、その理由と解決策をご紹介していきたいと思います。
看護師1年目で辞めたくなる理由①毎日激務
看護師1年目は基礎の土台を作る大切な時期であるため、半年から1年間かけて過密な年間スケジュールのもと指導を受けることが一般的です。
また、看護業界は慢性的な人手不足が問題視されており、看護師1年目をどれだけ早く一人前の看護師に育てるかが重要視されてしまいます。
そのため、「社会人」としての自覚だけではなく、「看護師」としても期間内に多くのことを習得しなければなりません。
その結果、勤務時間内での多重業務だけでなく、時間外にも自宅学習や研修を積極的に行わなくてはならず「業務に追われて看護のやりがいを感じない」と言った悩みが数多く聞かれるのが現状です。
日々の激務を乗り越える方法
日々追われる業務を乗り越える方法として主に4つ挙げられます。
- 新人看護師の激務はどの病院でも一緒と自覚する
病院で働く多くの新人看護は、終わりの見えない仕事量とやらなければならない業務量の多さに対して悩みを抱えています。
そのため、まずは「私だけがツライ」と悩んで落ち込まずに「皆もキツイ。新人なんて悩んで当たり前。」という心構えを持って働いてみましょう。
- 1年間の長期目標、半年間の中期目標、1ヶ月毎の短期目標を自分の中で決めておく
長い1年間を乗り越えるためには、ある程度の「看護に対する」目標が必要です。
その理由は、「看護師としてのレベルを上げるため」と「多重な業務の中でも達成感や、やりがいを得るため」です。
看護師の業務は多岐にわたるため、目標なしで闇雲に業務をこなすと、自分に何が足りないのか、どんな看護師になりたいのかを見いだせないまま殺伐とした日々を過ごしてしまう恐れがあります。
そのため、短期・中期・長期の目標を定期的に設定し、意識を持って業務に取り組むことで、看護師としてレベルアップすることができ、自分の明確な目標を設定することで、指導者側も教育が行いやすくなります。
そして4月には出来なかったことも目標を決めて1つずつ達成することで、次第に「やりがい」と「自信」を持つことが出来ます。
- 1日の時間管理を身につける
新人看護師の苦手なことの1つとして「時間管理」が挙げられます。
1日の限られた時間の中で、ただダラダラと仕事をしていれば「全然仕事が終わらない」ということに繋がります。
また、病院では急変や緊急入院など予想外のことも起こりやすいため、予定通りに物事が進まないことがほとんどです。
そのため、どんな時でも臨機応変に行動できるためにも「時間管理」が大切になってきます。
具体的な時間管理の方法としては、その日のスケジュールやTODOリストを書き、スケジュールに沿って業務をこなせるようにタイマーを頻回に設定し、時間を意識しながら行動することがまず挙げられます。
そして移動中も貴重な時間を費やさないよう、動線を意識して行動しましょう。
最初は1つ1つの処置に時間がかかり大変ですが、慣れてくると短時間でも適切な処置を行うことが出来るようになります。
早く業務を終わらせることで、患者さんとゆっくり話す時間や、自己学習が業務内でも出来るようになり心のゆとりにも繋がりますよ。
- 「不安なこと」「出来ないこと」「悩んでいる」ことは先輩看護師に思い切って相談してみる
何も言わないでいると何を悩んでいるのか分からずに課題だけが課されてしまいます。
自分に余裕を持たせるためにも、一度プリセプターや他の信頼できる看護師に相談してみてください。
看護師1年目が辞めたくなる理由②給料面
「看護師になりたい」と思う理由のなかに「安定しているから」や「給料が良さそうだから」ということを挙げる方も少なくありません。
実際に看護師1年目の平均基本給与額は20万〜21万で、手取りとしては22-24万前後です。
これはあくまでも平均値であり、勤務先によっても給与の金額は異なります。
特に規模の大きな大学病院や民間病院の場合、手取り額が20万円を超えるところがほとんどですが、それ以上稼ぐとなると夜勤などの手当てが必要となってきます。
そのため、夜勤回数が少ない看護師1年目にとっては「これだけ働いてこの金額なら、仕事量に見合ってない」と不満を抱える方も少なくありません。
解決策〜夜勤をして給料をあげよう〜
看護師の場合、夜勤の回数が増えれば給料は上がっていきます。
また看護師は一般職種の平均に比べれば年収、ボーナスともに高めであることが多く、専門看護師の資格も取得すれば資格手当が増える可能性もあり、辛い1年目を乗り越えれば年収アップも十分考えられます。
看護師1年目が辞めたくなる理由③人間関係
看護師の場合、先輩看護師だけでなく医師などの他職種、そして患者や家族との関わりも必要になり、人間関係に特殊性を持っています。
特に新人看護師を直接的に指導し精神面でも支える立場のプリセプターとの相性や、受け持ち患者さんとの関係性も重要になってきます。
そして命に関わるようなミスをしてしまった場合、先輩看護師や医師から厳しく指導されることも少なくありません。
ただでさえ悩みの多い1年目看護師にとって、人間関係はより良く働く上で重要なポイントとなってくると言えるでしょう。
人間関係における解決策
- 指導を受ける時は低姿勢かつ向上心を持った態度をとろう!
仕事の出来る先輩看護師ほど看護師1年目がどのような態度で仕事に挑んでいるのか注意深く観察しています。
そのため指導に対して誠実に向き合う、向上心のある新人看護師であれば、自ずと先輩から声をかけてくれるようになります。
そして指導を受けたことは常にメモに取るように行動し、同じ失敗をしないように定期的に見直すようにし、自分で働きやすい環境を作っていきましょう。
- 些細な仕事も積極的に引き受ける!
一見スキルアップには関係のなさそうな誰もやりたがらない仕事も率先してみましょう。
意外と自分の成長に繋がるだけでなく、忙しくピリピリしている先輩看護師たちにとっても有難いと思われるような存在になり、貴女への見方が変わるかもしれません。
- 自分を変えてみよう!
関係性を改善させたい先輩看護師や医師などの思考や行動を変えることは難しくても、自分を変えることは可能です。
そのため、周りのスタッフから信用されやすい人格になるために、自己の考え方や行動を変えてみるのも一つの方法ですよ。
【先輩からも信頼されやすい後輩看護師像(例)】
- 看護師としてゆるぎない信念がある
- セルフ・コントロールが出来る
- 正義感や責任感がある
- 決断力がある
- 計画性がある
- 報酬以上の仕事をしようとする行動がみえる
- 明るい性格または笑顔で接する
- 思いやりと相手を理解しようとし、協調性がある
看護師1年目が辞めたくなる理由④責任感の重圧
看護師になり学生の時と異なることの1つが「責任の重さ」ではないでしょうか。
看護師にとって、目の前の患者さんの病状を理解しながら日々の注射や処置、観察を行うことはやりがいにも繋がりますが、一歩間違うと「命」に関わってしまいます。
特に看護師1年目は知識不足や技術不足から「失敗」や「インシデント」を起こしやすいものです。
しかし、 例え命に関わらない小さなことでも失敗してしまうと、それだけで「怖い」という感情が生まれ「看護師に向いてない」と思ってしまう要因に繋がる可能性があります。
「責任」に重きをおくより、「対策」を意識して行動しよう
看護師1年目が責任感を感じる要因として、医療ミスに繋がる失敗や、インシデントへのプレッシャーなどが考えられます。
しかし看護師をしている以上1回もミスを起こさない人間なんて1人もいません。
そのため、看護師として働く上で大事なことは「ミスや失敗は誰にでもあり、特別なことではない。」と捉え、まずはそれを受け止めて、二度と起こさないように対策を考えることが大切です。
また、他の看護師が起こしたミスや失敗、インシデントなども自分のことのように捉えることで、よりミスを防ぐ対策が身につくようになりますよ。
看護師1年目が辞めたくなる理由⑤知識不足・技術不足
看護師1年目が先輩看護師や医師、患者さんから注意や指導されたり、怒られたりする原因のほとんどが「知識・技術不足」です。
こればかりは学習と経験の積み重ねが必要ですが、やることや覚えることの多い1年目にとってはこの勉強時間の確保が難しいのも問題だと言えます。
そして病気に対する「勉強」が出来ても患者さんに合わせた「アセスメント」ができなければ、看護は出来ません。
そのため、毎日のように注意を受けることで「向いてない」「自分ばかりが注意されている気がする」と落ち込み、大きなストレスになってしまいます。
知識不足・技術不足は出来るだけ勤務内にクリアしよう!
知識不足や技術不足が懸念される看護師1年目ですが、勤務内での業務に追われて体力・精神力共に限界な状態で家路に着きます。
そのため、その日受け持った患者さんの病態や知らない薬剤はその都度調べる癖をつける癖をつけていきましょう。
また、技術不足に関しては「経験」でしか補うことが出来ず、その経験を得るチャンスは1年目に数多く訪れます。
そのため苦手意識を克服するためにも、自分から積極的に様々な処置につきたいことをアピールしていきましょう。
看護師1年目で転職するメリット
看護師1年目は転職に不利なイメージがありませんか?
もちろん不利なケースもありますが、実は有利に働くこともあります。
ここでは看護師1年目が転職することでメリットとなる要素についてご紹介していきます。
第二新卒として転職することで心機一転した気持ちで看護を続けられる
近年特にコロナ禍の影響もあり、慢性的な看護師不足に拍車がかかり、普段は新卒または中途のみしか募集してないような大きな病院でも「第二新卒者」を募集するようになりました。
そのため、第二新卒者として新しい環境で心機一転やり直すことができます。
せっかく努力して取得した看護師免許でも「看護」すること自体嫌になってしまっては元も子もありません。
看護師という仕事が嫌になる前に、職場を変えて一からやり直すのもひとつの方法ですよ。
看護技術や考え方に「癖」や「固定概念」がない
看護師になり長い間1つの病院で働くほど、病院独自の理念や考え方、処置の仕方において癖や固定概念が出来てしまっている場合があります。
その分数ヶ月しか働いていない看護師1年目であれば、先入観や固定概念などがなく新しい職場のやり方になじみやすくなります。
現在の職場を辞めやすい
職場が嫌で「辞めたい」と思ったとき、看護師何年目であればすんなり辞めさせてもらえるかご存知ですか?
その答えは「辞めることに年数は関係ない」ところがほとんどです。
2年目からは委員会活動が開始し、辞めたいと切り出しにくい雰囲気なり、3年目からは新人を指導するプリセプターやリーダーに任さることも多く、「貴女が辞めたら新人の子達が可哀想でしょ」などと言われるようになります。
また、4.5年目以上に至っては「結婚・出産・育児」などのライフスタイルが変わらない限りは大切な戦力として位置するため、人手不足のこの業界では簡単には辞めさせてもらえません。
そのため多くの病院では、役割が少なく人間関係もまだ確立されていない1年目のほうが実は辞めやすい傾向にあります。
成長する可能性が高く、年齢的にも体力がある
看護師1年目の場合、ほとんどが20代前半であることが多いです。
そのため今後の伸びしろや期待も大きく、年齢的にも体力がある時期であるため、意外と肉体労働が多い看護業界においては有望な戦力となります。
転職先でも教育してもらえる可能性が高い
2年目以降に転職した場合、ほとんどの病院や施設では、自立した看護師として扱われます。
しかし看護師1年目であると分かった上で転職を引き受けた職場であれば、新卒同様の教育体制を取り指導してくれるところがほとんどです。
そのため、数年のうちに転職することが確実となっており、新しい環境で自分の学びたい看護を早期に得て、経験を積んでいきたいと希望するのであれば、早めの転職が得策な場合もあります。
看護師1年目で転職するデメリット
看護師1年目で転職するのはメリットだけではなく、もちろんデメリットもあります。
安易に職場を退職して、後で「こんなはずじゃなかった」と思わないように注意しましょう。
就職先が限られる
看護師1年目の転職の場合、どうしても転職先で基礎からの指導をしなくてはならないため、年度途中の採用が難しく転職先が限られる可能性があります。
転職時にマイナスイメージを持たれる可能性がある
新しい職場で転職する際必ず聞かれる質問が「なぜ転職しようと思ったのか」ということです。
特に1年目の場合は「忍耐力がない」と判断され、「採用してもまたすぐに辞めてしまうのではないか」とマイナスイメージを持たれてしまう可能性があります。
教育体制が整っていない可能性がある
第二新卒者を採用する職場の場合、慢性的な人手不足であることが多いです。
そのため、もともと教育体制自体整っていないケースもあり、その場合は採用されてもゆっくり丁寧な指導を受けることが難しくなります。
そのため、せっかく転職してもなかなか仕事を覚えることが出来ずに苦労してしまう可能性があります。
お礼奉公中の場合、奨学金の返還を一括で求められる
看護師1年目の人の中には、看護奨学金を病院から出してもらいお礼奉公している人もいると思いますが途中で退職した場合、奨学金の返還を求められることがほとんどです。
分割で払える病院もありますが、一般的には退職時に一括返済のケースが多いため、貯金もまだ出来ていない看護師1年目の場合デメリットと言えるでしょう。
看護師1年目でも病院を辞めて転職した方がいいケース
これまでは看護師1年目が悩む問題とその解決法、転職するメリットとデメリットをご紹介してきましたが、以下のケースの場合は病院を辞めて新たな環境へ転職することをオススメします。
心身の健康に支障をきたしている場合
看護師は「うつ病」などの精神疾患に陥りやすいことをご存知でしょうか。
看護業務は想像以上に肉体労働なことが多く、また人間関係の複雑化や命と向き合う重圧により心身にストレスがかかりやすくなります。
「頑張り過ぎる」ことで、肉体的にも精神的に限界にきてしまっている場合は、休職や転職・退職を視野に入れて現状を変えることをオススメします。
様々なハラスメントが改善されない
看護業務は様々なハラスメントが起きやすいことが問題視されています。
例えば医者や患者さんからのセクシャルハラスメントや、医者や上司、患者さん、家族からの強いパワーハラスメントを受ける可能性が高い職種です。
そのため「看護師が安全に働ける環境」が整っていない職場であれば、自分の身を守るためにも転職を視野にいれる必要があります。
勤務条件・待遇が労働基準法を反している
労働基準法に違反した過酷な労働を強いられる上に残業代も出さない職場が、未だ数多く存在しています。
そのような場合は、労働基準局に報告するか新たな職場先を探して心機一転することもオススメします。
看護師1年目が転職を成功させるポイント
転職理由を明確にして自分に合った転職先を見つける
自分に合った転職先を見つけるためにも「何故転職しようと思ったか」を明確にしましょう。
例えば、教育体制が整っていなかった職場からの転職であれば、次に探すのは教育制度の整った職場です。
また、人の死に向き合うのが耐えられないことが理由であれば、比較的生死に関わらない保育園の看護師やリハビリ病院などもあります。
転職理由を明確にしなければ、転職先でも再度辞めてしまう可能性が高くなります。
教育体制が整っており、第二新卒者の転職を受け入れている病院を探す
看護師1年目が転職先として選ぶオススメの職場は、「第二新卒者を募集している」ことと「教育体制が整っている」ことです。
この際自分で求人を探すことも可能ですが、第二新卒者に対しての教育体制がどのようになっているかまではホームページに載っていないケースが多いです。
そのため、看護師1年目の場合は転職のプロである転職エージェントに探してもらうことをオススメします。
転職を決める前に職場を見学する
職場の雰囲気はホームページなどの写真では分からないことが多いです。
そのため、職場の雰囲気が自分に合いそうかを事前に確認し、そこで働く看護師の表情や働き方の姿をチェックしておくことをオススメします。
転職先に「前職への不満」は伝えない
前職への不満を伝えるような看護師の場合、転職先でも不満ばかり言うのではないかという悪い印象を相手に抱かせてしまいます。
そのため退職した理由の「事実」を述べるのは問題ありませんが「不満」は伝えないようにしましょう。
転職先に就職したい!というやる気をアピールする
看護師1年目を面接する場合、面接者側は今後の伸びしろや職場に貢献してくれる人材を求めています。
そのため、面接の際はやる気やポテンシャルの高さなどをアピールすることで採用される確率が上がりますよ。
転職のプロに相談する
看護師1年目は求人雑誌等で転職先を探すのは不向きです。
転職エージェントのいる転職サービスを利用することで、自分に合った転職先を見つけられる可能性が広がり、あなたが不安に思っていることの相談に乗ってくれたり、アドバイスをしてくれたりするのでオススメです。
まとめ
看護師1年目の転職は経験のある看護師に比べると極めて困難なケースが多いです。
そのため、まずは転職エージェントに相談することをオススメします。
転職エージェントはあなたの条件に近い転職先を見つけるだけの幅広い情報を持っているため、選択肢の幅を広げることができます。
また、職場の雰囲気や実際の待遇などの自分では聞きにくい細かな情報も教えてくれたり、履歴書の書き方や面接対策まで親切丁寧にアドバイスしてくれたりするため、転職を少しでも考えている方には是非利用してみてはいかがでしょうか。
不安要素の多い看護師1年目にとって、転職サービスを利用すれば転職を成功させるための近道となりますよ。