みんなが行きたくない科、人気のない科には必ず理由があります。
出来る事ならば、みんな自分の興味のある分野で思い切り看護していきたいですよね。
ですが、看護師になって生涯1つの科しか経験しないという働き方は、現代の看護業界において、まずありえないといえるのではないでしょうか?
著者も転職回数は片手で足りる程度ですが、看護師になって最初の10年で混合外科も合わせると5科以上を経験してきました。
科が変わると全くの別世界ですが、転職する時に必ず気になるのが次何科で働くのかとい点ですよね。
みんな同じ看護師免許を持っているのに、経験のない科の事は意外と知らない看護の世界。
この記事を読むとみんなが行きたくない科を知れるだけでなく、特色を知ることで意外とあなたに向いている、新たな看護の道が開けるかもしれません。
みんなが行きたくない科5選
精神科
経験したことがないと嫌煙されがちな科、永遠不動の1位が精神科ではないでしょうか。理由は様々聞かれますが、一番多く持たれるイメージが「怖い、自分が病んでしまいそう。」続いて「必要とされる看護技術があまりなく、身の回りの介助ばかりになりそう。」この2点です。
実際のところ、精神疾患の症状が出ていて日常生活を送ることが困難な患者を相手にする場所ですから、混乱状態で指示の入らない患者、支離滅裂な発言をする患者も対象に看護提供しなければなりません。
患者の個別性を十分に理解し、自立を促すプロセスを踏んでいく精神科の仕事は看護師として精神的にも大変重労働といえるでしょう。
このような精神的負担やイメージから、今まで必ずと言えるほど「行きたくない科」と言われていた精神科ですが、昨今男性看護師の活躍によって大きく変わってきていると著者は感じています。
混乱状態の患者を安全に対応するために男性看護師の多い職場になりやすく、男性看護師の需要と供給は高い傾向にあるため、従来の「怖い」という女性看護師からみた精神科のイメージは少しずつ薄まってきていると言えます。
よって、男性看護師や、疾患と患者を客観的に見て、あまり感情をコントロールされないと自信のある看護師からすると、行きたい科にランクインしてくる科とも言えるでしょう。
さらに、医療行為が少ないと思われがちな精神科ですが、確かに多くはないものの、現代社会において精神疾患を抱える患者も高齢化してきており、症状によっては食事がとれないことも少なくありません。
その場合、点滴のルート確保や採血などの医療行為も必要で、患者が落ち着いている時や、混乱状態の患者を押さえつけながらの高度な処置を求められる可能性も十分にあります。
実は、より正確で手際の良い看護技術を求められる科でもあるのです。
手術室
病棟や外来経験しかない看護師にとって、恐怖すら感じる、看護業界でもかなり特殊性の高い科ではないでしょうか。
「血を見るのが苦手」「処置を見ていられない」など苦手意識のある看護師が一定数いるのももちろんですが、病棟や外来での看護との一番の違いは、患者と触れ合う時間が極めて少ないと点です。
全身麻酔下の手術では、患者と関わる時間は術前術後訪問、入室から麻酔導入まで、麻酔覚醒から退室までのほんの数分程度しかありません。
その短い時間の中で個別性を理解し、不安を取り除き、家族のサポートまで行う手術室看護師は、疾患や術式の理解、器械出しの技術だけでなく、コミュニケーションのプロ集団とも言えるでしょう。
また、ほかの科は医師が固定されているのに対し、外科系のすべての科の医師、麻酔科医とコミュニケーションをとりながら円滑に手術が進むようマネージメントしなければならないため、ここがなかなか辛いところです。
人当たりに良さや、医師によって対応を変えるなどの臨機応変なコミュニケーション能力を求められるということです。
著者は手術室に異動したてのころ「術中は、俺に気持ちよくオペさせることだけ考えて動け」と執刀医から言われたことがあります。
現代でこんなことを強い口調で言われたらパワハラですが、当時は「ここは銀座の高級クラブですもんね」と返すのが精いっぱいでした。
独特で閉鎖的な空間ではありましたが、飛び込んでみると手術自体は思ったより楽しく、技術の習得に励んでいる間に何年か過ぎて行ってしまう感覚でしたし、その後の看護人生において大変勉強になる科だと感じました。
夜間や休日のオンコールも苦ではない方には、収入も増え、苦手なタイプの患者とも手術が終わってしまえば関わることもないため、指導さえきちんと受ける事が出来る環境であれば挑戦してみる価値はあると思います。
循環器科
解剖生理学的にも最も苦手意識を持つ看護師が多いのが循環器科ではないでしょうか。
心電図モニターの波形を読みながら異変にいち早く気づかなければなりませんし、急性期の病棟ではカテーテル検査後の観察など、患者の回転率も速いため激務となりやすい科と言えます。
急変対応が一番多いのも循環器科と言えるでしょう。
比較的細かく看護師の看護記録や入力事項をチェックするタイプの医師が多い特徴があり、普段の観察においても細かく指示されるため、「細かい」「めんどくさい」と感じる看護師も多くいるようです。
このように、いつでも気が抜けないというプレッシャーから、なかなか希望したがる看護師が少ないのです。
ただし、いつでも人手不足な印象があり、みんなが行きたがらない科ということは、経験があり、循環器科が好きな看護師が希望すれば転職活動も有利に働く科ではあります。
また外来やクリニック、ICUなどに今後転職を考えている方は何年か循環器科の経験があることや、心電図検定を受けていると、将来的に必ず武器になります。
産婦人科
行きたくない科というより、助産師の資格を持たない看護師はわざわざ選ばない科、と言えるかもしれません。
産婦人科での看護師の役割といえば、婦人科疾患の患者の看護が主であり、助産師資格がなければほとんどの場合出産や妊産婦にかかわるような業務はないといえるでしょう。
女性を相手にする職場であり、デリケートな分野であることから嫌煙されやすい科となっています。
また分娩中のトラブルは母子共に短時間で致死的状況に至るケースが多く、その場合は急変対応などで看護師も処置に参加するなど、臨機応変に素早く対応ができなくては戦力になりません。
もちろん、他の科では味わえない命の誕生や明るい話題に触れる機会があるという点は魅力ですし、今後助産師の道を考えている方や、女性の苦悩に寄り添いたいという看護師はぜひ力を発揮してほしい分野でもあります。
男性の患者が苦手、という方にもおすすめですし、クリニックなどでは比較的看護師の需要もあるようです。
いずれにせよ転職先として候補に挙げる看護師はなかなかいない印象です。
余談ですが、産婦人科医は妊産婦にはとても優しく接しますが、同僚の看護師には比較的口調が厳しい医師が多いので、出産経験のある看護師からするとギャップを感じてしまうこともあるでしょう。
外科
意外だな、と感じた方も多いかもしれません。
というのも、「絶対に外科病棟がいい」と希望する看護師も多い科ではあるからです。
よく学生時代には「あなたは外科系ね」「あなたは内科系」と周りから言われていたのに、実際新卒で配属された科が真逆の科だったという話を聞きます。
そういったケースでも希望をしていないのに内科に配属になった看護師より、希望していないのに外科に配属になったケースのほうが離職率は高いのです。
なぜでしょう。
その一番の理由は外科系病棟の回転率の速さに挙げられ、まさに目が回るほど忙しいのです。
よく外科系はサバサバした看護師が多いと言われますが、日中は分刻みで予約入院や手術があり、そのほかにも緊急入院や緊急手術、医師の回診介助、術前の準備など、じっくりひとつの事を追及している時間がないのです。
一日中時間に追われながらタスクをこなしていかなければならないのに、急変や見取り、がん患者の緩和ケアまで担う病棟もあります。
もともとこれらをこなす力量がまだない新人看護師で、しかも希望をしていないとなればキャパオーバーとなるのも無理はありません。
年齢が上がってくると「もう外科病棟はきついな」そう感じ離れていく看護師も多いため、非常に若い人が多いので、明るくエネルギッシュな職場ではあると思います。
精神科でも述べたように、現代の日本では高齢化が進み、術後であっても認知症で立ち上がってしまったり、抜かれては治療に差し支える管類も抜かれてしまったりインシデントが多く、それに伴うリスク管理が必要です。
やはりここでも向いている人、そうでない人に分かれる分野なので、生涯外科系で勤め上げる看護師も比較的多い傾向にあり、転職の際の競争率は激しい科ではあります。
もしも行きたくない科に配属されてしまったら
みなさんが行きたくない科、苦手意識のある科は含まれていましたか?
この他にも小児科、透析室、外来など、専門性が高く敷居が高いと感じる科もまだまだあるでしょう。
ここで問題になってくるのが、看護師は何科の看護師という各科個別の資格があって働くわけではないため、転職した先で行きたくない科に配属になってしまうこともあるということです。
面接ではまず内定を取るために「どの科でも頑張ります」など意欲を見せておこうと考えて発言してしまいがちですが、まず人気のある科は人手が足りているため、よほどタイムリーでない限り、人手の足りていない科、つまり人気のない科に配属されてしまうでしょう。
このように希望以外の配属先に決まってしまった際に、あなたが取るべき行動は2つあります。
まずひとつ目は「まずは一度挑戦してみる」です。
人によりますが最初の1か月我慢してやってみると、案外その場でも自分の力を発揮出来たり、新しいことへの挑戦が楽しくなってきたりする場合もあります。
やってみて楽しい、意外とむいているかも、そう思えれば新たな道も開けてきますし、キャリアとしてもプラスになりますね。
ふたつ目はやはり向いていなかったと思う場合は、潔く異動や退職を選択しましょう。
異動が難しければ、希望する配属先を明確にエージェントさんへ伝えた上で再度転職活動を開始すればよいのです。
まとめ
行きたくない科、人気のない科についてご紹介しました,
「やっぱりね」と思った方も、「大変そう」と思った方も様々かと思います。
とはいえ、みなさんもお気づきのように、行きたくない科の特性の中には「私なら出来そう」「挑戦してもいいかな」そう思えるものがあったのではないかと思います。
怖いもの見たさでやってみようかな?そんな気持ちで著者も手術室や、苦手意識のあった科へ挑戦したことがあります。
やはり向いていないな、と退職しましたが、その経験は現在日常の看護業務でも役立ち、こうしてネタにもなっているわけです。
看護業界は現在病院以外にも在宅や施設、企業など多岐に渡ってたくさんの看護師が日々力を発揮しています。
同じ科で働いていても、独身の看護師、家庭やお子さんの育児をしながら働くママさん看護師、一家を支える看護師、みんなそれぞれ抱える状況によって「行きたくない」の理由も変わってくるのです。
転職活動を行う上で職場の人間関係、就業規則など大切な項目はいくつもあると思いますが、看護師は専門職なので、自分が身を置く場で、どれだけ興味を持って経験を積み、学習していける分野か、いかに自分が没頭できるか、医療人として働いていく上では大切なポイントであることは言うまでもありません。
今回ここでは各科のイメージや口コミなどから5選ご紹介しましたが、切り口を変えると過酷だと感じる介入の内容によって、今回上がっていない科が上がってくるのが看護業界の面白いところだと著者は感じています。
この記事を読んで、是非一度行きたくない科を明確にして、エージェントさんに伝えるなど、みなさんの転職活動が一歩また理想に近づき、新たな扉を開くきっかけとなれば幸いです。