「SaaS」とは「Software as a Service(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)」の略で、クラウド上に作られたアプリやサービスを、インターネットで提供することです。
代表例としては、動画・音楽配信サービスやウェブ会議のZoomが有名で、サブスクリプション(継続課金モデル)であることが特徴です。
従来の買い切り型のソフトウエアと比較して、継続課金型は顧客が低価格でサービスを導入できるというメリットがあります。
リモートやコストカットに注目が集まっている昨今、今後さらにSaaS企業に対する需要が増大する見込みです。
SaaS営業の特徴
SaaSは、サブスクリプション(料金を支払うことで、製品やサービスを一定期間利用できる)により、ソフトウエアを提供します。
継続課金は、もともと新聞や雑誌の定期購読や予約購読を意味する言葉でしたが、その後データやソフトウエアを提供するデジタル領域で広まりました。
サブスクリプションというと、「月額課金・定額課金」のイメージがありますが、実際にはやや異なります。
SaaSは、「ユーザーが必要とする部分のみを提供するサービス」のため、ニーズによっては金額やサービス内容が変わります。
SaaS営業は、利用するユーザーのニーズに注目し、それに応える価値をプレゼンしなければならない点が特徴です。
SaaSビジネスのメリット
- アップデートに素早く対応できる
- インターネット経由でサービスを提供するため、物理的なソフトが不要
- サービス導入時の初期コストが安い
- ユーザーの増加により売り上げが積みあがる
SaaSビジネスのデメリット
- 顧客がサービスに満足しなかった場合は、初月で解約されることもある
- 大型案件で受注金額を大幅に上げることは不可能
SaaS営業の4つの職種
従来の営業は、見込み客の獲得から契約締結までを、一人の担当者が一貫して行っていました。
しかしSaaS営業では、仕事の内容を4つの分業体制にし、それぞれが特化して行います。
なぜなら、このような営業プロセスの方が、確率の高い見込み客に効率的に「最高の問題解決方法」を提供できるからです。
マーケティング
マーケティングは、テレビCMやネット広告・SNS発信・セミナー・イベントなどで、ユーザーに自社のサービスを認知させます。
その後、興味や関心のありそうなターゲットを選び、見込み客を作成して顧客獲得の入り口を担います。
インサイドセールス
SaaS営業で主流となるインサイドセールス(内勤営業)は、マーケティングとフィールドセールス(外勤営業)の橋渡しをする存在です。
マーケティングで獲得した見込み客情報のデータを分析し、受注につながる可能性の高い見込み客の興味や関心を探ります。
メールや電話、その他のツールを使って見込み客とのコミュニケーションを図り、関係を築いた後でフィールドセールスのアポイントへとつなげます。
フィールドセールス
フィールドセールスは、インサイドセールスが得た見込み客の情報を生かし、お客様に最適な商品やサービスの提案をします。
フィールドセールスが、最後の営業訪問とクロージング(契約の締結)を行います。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスの意味するところは、文字通り「顧客の成功」です。
顧客の事業成果やゴールを理解したうえで、提供しているツールの使用状況データを分析し、必要な行動計画のガイドをします。
従来のカスタマーサポートが受け身であるのに比べ、カスタマーサクセスは能動的な支援を行うことで自社利益との両立を目指します。
SaaS営業に必要な3つのスキル
SaaS営業ならではの必須スキルとは何でしょうか。
ここでは、SaaS営業で必要な3つのスキルを紹介します。
ヒアリングスキル
SaaS営業では、特に「聞く能力」が重視されます。
ヒアリングスキルが低いと、顧客の悩みや課題を引き出すことができず、適切なアプローチができません。
その結果、受注に成功したとしても解約率が上がってしまいます。
顧客のニーズを正しく把握できると、サービスをグレードアップしたり複数のプロダクト利用を提案したりと、適切なサポートが可能です。
ヒアリングスキルが高ければ、顧客も納得してサービスを使い続けるため、継続率が高まります。
情報分析と課題解決スキル
ユーザーは往々にして、ITの技術に乏しいことがあります。
そのため、自社サービスの全ての機能を伝えたとしても、顧客はそのサービスの良さを実感できません。
情報やデータを分析したうえで、顧客の抱える潜在的な課題を察知し、その解決策として自社のサービスを提案するとその魅力に気づいてもらえます。
顧客ファーストによる信頼関係構築スキル
SaaS営業では、長期的に顧客の事業成長をサポートをする必要があります。
顧客の立場に立った丁寧な対応や、自社のプロダクトに対する深い知識と理解など、信頼関係を築くためのスキルが求められます。
SaaS営業に向く人と向かない人
自社製品の販売を重視する一般的な営業に比べると、SaaS営業は難度の高い業務と言えます。
自社の利益だけを優先せずに、顧客の立場に立ち、場合によっては他社のサービスであっても紹介する必要があるからです。
SaaS営業に向く人
- 相手の悩みを聞くのが得意な人
- 顧客に喜ばれるサービスを提供したい人
- 長期的な利益を優先したい人
- これから伸びる業界や企業につきたい人
- 新しいトレンドのプロダクトを売りたい人
SaaS営業に向かない人
- 目の前の数字を追うことが好きな人
- 頑固で変化に対応ができない人
- すぐにあきらめてしまう人
SaaS営業は、短期的には数字としての成果が小さいので、大きな売上数字を追うことにモチベーションを感じる人は、魅力を感じにくいでしょう。
また、新しいテクノロジーや新しい顧客、パートナーに次々と対応しなければならないことから、
謙虚に話を聞き、素直に実行できる人が求められます。
SaaS営業の年収と代表的なSaaS企業
大手転職サイト「マイナビ転職」によると、営業(ソフトウエア業界)の全年代平均年収は462万円と報告されています。
(20代 375万円 30代 502万円 40代以上 603万円)
ただし、企業によってその差は大きく、データ上では350万円~800万円と大きな幅があります。
年収を重視して転職を考える方にとっては、企業選びが大切です。
以下に代表的な「世界的なSaaS企業」と「国内のSaaS企業」を各3社ずつご紹介します。
企業選びの参考にしてください。
グーグル(Google LLC)
普段から、数多くの人がGoogleのサービスを利用しています。
検索サービスの他にも、マップや翻訳・カレンダー・Gmail・YouTubeなど、毎日の生活に欠かせないサービスを提供している企業です。
アドビ(Adobe Inc.)
デザインツールの「Illustrator」や「Photoshop」を提供していることで有名です。
他にも、アクセス解析関連の企業向けマーケティングサービスなども展開しています。
ドロップボックス(Dropbox, Inc.)
クラウドストレージサービスを提供しています。
また「データやリンクの共有」「共有フォルダー」などの、企業向けサービスも行っています。
以上の3つはアメリカのSaaS企業です。
サイボウズ株式会社
企業向けの業務改善を目的としたサービスを展開しています。
グループウェアである「サイボウズOffice」は、社内のスケジュールやメール・ファイル管理を容易にし、情報管理をスムーズに行います。
SanSan株式会社
法人向けのクラウド名刺管理サービスを提供していることで知られています。
また、個人向け名刺アプリ「Eight」やクラウド請求書受領サービスの「Bill One」も展開しています。
Free株式会社
企業向けに「クラウド会計ソフト」や「人事労務ソフト」を提供しています。
「個人向け会計ソフト」は、スマホアプリで確定申告や経理も行えます。
以上の3つは、日本のSaaS企業です。
その他の代表的なSaaSサービス
以前はパッケージで販売していたソフトウエアを、現在ではクラウドサービスとして提供しているものも数多くあります。
サービスのカテゴリーはさまざまですが、各分野で知名度が高くシェアの多いものをご紹介します。
グループウェア
- Office365
- Desknet’NEO(デスクネッツ ネオ)
- Kintone(キントーン)
- Garoon(ガルーン)
社内SNS
- Workplace(ワークプレイス)by Facebook
- Talknote(トークノート)
- airy(エアリー)
名刺管理
- CAMCARD BUSINESS
プロジェクト管理
- Trello(トレロ)
- Asana(アサナ)
- Wrike(ライク)
- JIRA(ジラ)
会計ソフト
- 弥生会計オンライン
- MFクラウド会計
ビジネスチャット
- Chatwork
- Slack
- LINEWORKS
ERP(経営資源計画)
- NetSuite(ネットスイート)
- Business One Cloud
- SAP(エスエイピー)
- GLOVIA OM
- Workday(ワークデイ)
CRM/SFA(顧客管理/営業支援システム)
- Salesforce(セールスフォース)
- Knowledge Suite(ナレッジスイート)
- eセールスマネージャー
クラウドサービスの種類と違い
「クラウドサービス」という言葉はかなり広まりましたが、その仕組みは大きく分けて「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3つに分けられます。
転職前に、これらの違いについて、把握しておきましょう。
SaaS(サーズ/サース)とは?
SaaSとは「Software as a Service(サービスとしてのソフトウエア)」であり、クラウド上で提供されるソフトウエアのことです。
ユーザーはソフトウエアをインストールするのではなく、ネットワーク経由でその機能を活用できます。
例えば、Gmailやブログサービス・Salesforceなどのサービスがこれに該当します。
ユーザーにとっては、申し込んですぐに使える点が便利ですが、ベンダー(プロバイダー)側がソフトウエアを動かすため制限があります。
PaaS(パース)とは?
PaaSとは「Platform as a Service(サービスとしてのプラットフォーム)」の略で、Google Apps EngineやMicrosoft Azureがこれに当たります。
アプリケーションソフトを稼働させるためのデータベースや、プログラムの実行環境を提供するサービスです。
インフラから開発するのは手間がかかるが、ある程度のカスタマイズをしたいユーザーに向いています。
IaaS(イアース/アイアース)とは?
IaaSは「Infrastructure as a Service(サービスとしてのインフラ)」の略で、代表例としてGoogle Compute EngineやAmazon Elastic Compute Cloudがあります。
情報システムを動かすために必要な仮想サーバーや、ハードディスク・ファイアウォールといったインフラをインターネット上に提供するサービスです。
SaaSやPaaSと違い、OSやハードウエアのスペックも自由に選べます。
その一方、ユーザーにはネットワークやセキュリテイ対策に関する知識が必要です。
SaaS営業後の3つのキャリアパス
SaaS営業では、「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」を行き来することで、キャリアアップを図ることが一般的です。
ここでは、その他もに考えられるキャリアパスを3つご紹介します。
より条件の良いSaaS企業へ転職する
SaaS企業は、扱っているプロダクトや給与がさまざまなので、自分にとってより条件の良い企業を見つけたら、転職を検討するのも良いでしょう。
数社のSaaS企業を渡り歩くことで、SaaS営業の専門家になることができます。
無形商材であるSaaSの法人営業は、キャリアアップに有効です。
転職先の企業を選ぶ際には、法人向けサービスを提供しているかどうかを確認しましょう。
管理職になる
マネジメントの経験を積んで、各チームのマネージャーや管理職になる選択肢もあります。
裁量権が増えれば、「セールスチーム」や「カスタマーサクセスチーム」の人員を管理できるようになり、マネージャーや管理職に昇格する可能性も考えられます。
営業経験を生かして異業種へ転職する
ITや人材の異業種に関心がある方には、SaaS営業以外の企業に転職する道もあります。
SaaS営業は1つのことに集中して取り組める反面、人によっては「飽きる」という問題点も生じます。
業務を作業的にこなすことにマンネリを感じている人は、同じ無形商材を扱うITや人材業界なら、SaaS営業の経験を生かすことができます。
SaaS営業の転職を成功させるには
SaaS営業に転職するには、大きく分けて二つの方法があります。
一つ目は自分で求人/転職サイトから探して応募する方法です。
ただ、掲載されている情報には限りがあるため、実際の仕事内容がわかりにくいという欠点があります。
もう一つは、転職エージェントを利用する方法です。
この方法であれば、希望する条件を転職エージェントに伝えておくだけで、条件に合致する求人案件を探してもらえます。
求人/転職サイトでの応募に比べて手間がかからず、より詳しい情報を得られる点がメリットです。
また、SaaS企業は人気が高く応募者も多いため、書類選考や面接の通過もハードルが高くなっています。
SaaS営業の転職のプロに相談すれば、企業の内情や裏情報を直接聞いたり、専門的なアドバイスをもらったりできて有利です。
下記の記事では年代別に転職成功のポイントやおすすめの転職エージェントを紹介しています。
SaaS営業に転職したい方はぜひご覧ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
- Saas営業の特徴や仕事内容
- Saas営業に必要なスキル
- Saas営業の転職を成功させる方法
についてお伝えしてきました。
SaaS営業はまだまだ成長産業なので、完璧に営業できる人材はそれほど多くはいません。
少しでも興味や当てはまる部分がある方は、ぜひ転職エージェントに登録して相談してみてください。
無料のキャリア診断ができるところもあるので、転職に慣れていない方でも安心です。
今のうちからSaaS営業に転職すると先行者利益を得られ、その後のキャリアパス形成や年収アップなど明るい展望が開けます。