結婚式は新郎新婦にとって、人生の門出となる非常に重要なイベントです。
新郎新婦を祝福するために、ブライダルプランナーや衣装メイク担当者、司会者などさまざまな人が力を合わせて結婚式を作り上げています。
その中でも式を演出する音楽の生演奏を担当するのが、今回紹介するブライダルプレイヤーの仕事です。
ブライダルプレイヤーになるにはどうすればいいのか、仕事内容や求人の探し方について解説します。
ブライダルプレイヤーの仕事に興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
ブライダルプレイヤーの仕事内容とは?
ブライダルプレイヤーは、結婚式や披露宴で楽器を演奏する仕事の総称です。
挙式会場に設置されたピアノやエレクトーン、ハープなどを演奏することもあれば、バイオリンやビオラなどを持ち込んで演奏することもあります。
演奏スタイルも式によってさまざまで、ソロ以外にも四重奏、聖歌隊の伴奏といった活躍の場があります。
ただし、ブライダルプレイヤーが担当する仕事は楽器の演奏だけとは限りません。
ブライダルプレイヤーの主な仕事内容について、詳しく見ていきましょう。
挙式スタイルに合わせた演奏
結婚式は新郎新婦ごとに挙式スタイルが異なります。
神に結婚の誓いを立てるキリスト教式や参列者の前で結婚の宣誓をする人前式のように、多種多様な挙式スタイルがあります。
ブライダルプレイヤーは自分が弾きやすいように演奏するのではなく、挙式スタイルに合わせた演奏を提供する役割を担っています。
新郎新婦の入場やケーキ入刀、歓談中のBGMといった場にふさわしい演奏を求められるのが、一般的な演奏家と大きく異なる点といえます。
結婚式のしきたりやマナー、宗教・宗派に関する知識に精通し、どのような挙式スタイルであっても柔軟に対応する必要があります。
プランナーや司会者との打ち合わせ
結婚式は新郎新婦や参列者にとって一生の思い出となるイベントですので、ミスは決して許されません。
ミスなく式を挙行するため、演奏する曲目や式の進行、新郎新婦からの曲のリクエストなど、細部にまで徹底的にこだわり抜いた打ち合わせが行われます。
ブライダルプレイヤーは結婚式の演出に携わる一員として、プランナーや司会者と綿密な打ち合わせを通して式の全体像を把握しておかなくてはなりません。
1人の演奏家という枠を超えて、結婚式の演出家としての意識を持つ必要があるでしょう。
新郎新婦や参列者へのホスピタリティ
ブライダルプレイヤーが気を配るべきことは楽器の演奏だけではありません。
挙式会場の広さや構造は千差万別で、場所も屋内とは限りません。
それぞれの会場にふさわしい音量で演奏し、あくまでもさりげなく結婚式の演出を支える配慮が求められます。
新郎新婦や親御様が緊張のあまり頭の中が真っ白になり、リハーサルの内容を忘れてしまうこともあり得ます。
気持ちが落ち着くように声掛けをしたり、ハプニングが起きたことを参列者に悟られないよう演奏でつないだりすることも必要な場合があるでしょう。
このように、ブライダルプレイヤーは結婚式を演出する一員として、新郎新婦や参列者の様子を常に気づかい、ホスピタリティを提供する必要があります。
演奏に終始するのではなく、良い結婚式だったと実感してもらえるよう、おもてなしの気持ちを持つことが不可欠な仕事といえます。
ブライダルプレイヤーに求められるスキル・能力
ブライダルプレイヤーは演奏以外のことにも常に目を配り、配慮することが求められる仕事です。
では、ブライダルプレイヤーには具体的にどのようなスキルや能力が求められるのでしょうか。
一般的な演奏家には見られない、ブライダルプレイヤーに特有の知識・能力も含めて解説します。
担当する楽器の演奏技能
ブライダルプレイヤーはプロの演奏家ですので、担当する楽器の演奏技能が高いことは必須条件です。
楽譜を初見で演奏できる読譜力があり、幅広いジャンルの曲目を弾きこなす演奏力を兼ね備えている必要があります。
結婚式当日に演奏する曲目はあらかじめ決まっていることがほとんどですが、その場でリクエストを受けて演奏することもあります。
参列者が催す余興の伴奏を依頼されるケースでは、当日に打ち合わせをするまで余興の詳細が分からないこともあるでしょう。
クラシック以外にも、ジャズをはじめポピュラー音楽まで、広範囲にわたるジャンルの音楽を弾きこなせなくては務まらない仕事です。
あらゆるジャンルの演奏を一手に引き受けるには、高い演奏技能に支えられた豊富なレパートリーを備えていることは不可欠の条件といえます。
セレモニーに関する専門知識
結婚式ではいくつものセレモニーが行われますが、それらの1つ1つには意味があり、様式が決まっています。
たとえば、ベールダウンをどのタイミングで行うのか、ブーケブートニアにはどのような意味が込められているのか、といったことを正確に知っておかなくてはなりません。
こうした伝統的な演出に加え、近年では新郎の装いを親御様が仕上げるジャケットセレモニーを行うケースも見られます。
結婚式のトレンドや最新情報に関心を持ち、「知らなかった」「聞いたことがない」といったことのないよう、プロフェッショナルとして知識の習得に努めることが大切です。
臨機応変な対応能力
結婚式には想定外のハプニングやアクシデントがつきものです。
一例として、新婦と親御様がバージンロードを歩くペースは人それぞれですので、想定していたよりも長い時間がかかることもあり得ます。
曲の長さが足りなければ、その場でアレンジを加えて延ばす必要があります。
新郎新婦が緊張のあまりリハーサルと異なる行動をするなど、思わぬアクシデントが起きることもあるでしょう。
想定外の場面に遭遇しても冷静に演奏を続け、式の進行を妨げないようにしてなくてはなりません。
新郎新婦や参列者の様子を常に注意深く観察し、結婚式の雰囲気が台なしにならないよう機転を利かせる対応能力が求められます。
情報収集能力
結婚式を挙げる新郎新婦には、それぞれのエピソードや思い出があるはずです。
どの結婚式でも同じ演奏をするのではなく、新郎新婦の人柄に合わせた演奏をすることも重要な能力の1つです。
挙式当日の参列者の年齢層や雰囲気に合わせてアレンジを加えるなど、独自の工夫を施すことで思い出に残る演出となるでしょう。
こうした演出をする上で欠かせないのが情報収集能力です。
プランナーや司会者と連携を図り、周囲の様子にアンテナを張って情報を集める能力が求められる仕事といえます。
ブライダルプレイヤーの就業環境・給与条件
幅広い能力とスキルが求められるブライダルプレイヤーですが、就業環境や給与といった条件面に関してはどうでしょうか。
演奏家として華々しいイメージを持たれやすい職業のため、人目につかないところでどのような苦労や努力をしているのか、見えづらいところがあります。
ブライダルプレイヤーのワークスタイルや報酬について確認しておきましょう。
収入は結婚式の本数で決まる
ブライダルプレイヤーの収入は、演奏に対して支払われる報酬です。
演奏の依頼がなければ収入になりませんので、結婚式の本数によって収入が決まると考えていいでしょう。
ブライダル業界の繁忙期は春と秋で、この時期に挙式・披露宴が集中します。
つまり、ブライダルプレイヤーの仕事は稼げる時期とそうでない時期の差が激しいのです。
人口の多い都市部ではコンスタントに結婚式が行われていることもありますが、地域によっては挙式件数そのものが少ないこともあります。
そのため、多くのブライダルプレイヤーは音楽教室の講師など、演奏家以外の仕事を掛け持ちしているのが実情です。
報酬の相場は1挙式あたり3,000〜5,000円
ブライダルプレイヤーの報酬相場は、挙式1件あたり3,000〜5,000円、披露宴であれば1件あたり20,000〜50,000円です。
最近では大規模な披露宴を催すカップルが減っているため、挙式での演奏がメインの収入になっているケースが多く見られます。
大安の日には挙式が集中しますので、1日で数万円の収入を得ることも可能です。
演奏そのものは短時間であっても、リハーサルを含めると挙式1件で90分程度を要することから、時給に換算すると決して高い報酬ではありません。
単純に時給の部分だけを見ると、飲食店やコンビニでのアルバイトのほうが高い場合もあります。
高額の報酬を得ることよりも、音楽を通じて人の幸せに立ち合うことにやりがいを感じる人に向いている仕事といえます。
衣装や装飾品、交通費は自己負担
ブライダルプレイヤーは、挙式会場の雰囲気に調和する演奏用の衣装を用意する必要があります。
楽器や譜面台が殺風景に見えないよう、装飾品を用意することもあるでしょう。
こうした品々はブライダルプレイヤーの仕事をしていく上で欠かせないものですが、所属する音楽事務所などが提供してくれるわけではありません。
会場までの交通費も含めて、ブライダルプレイヤーが自己負担で用意するケースがほとんどです。
そのため、演奏料として受け取る報酬のすべてが純粋な収入になるわけではなく、必要経費を差し引いたものが事実上の手取り額となります。
控え室の用意がない会場も多い
挙式会場には新郎新婦や親御様、参列者のための控え室は用意されていますが、ブライダルプレイヤーが待機するためのスペースは用意されていないことがあります。
挙式が屋外で行われる場合は、演奏中だけでなく演奏の前後も屋外で待機しなくてはなりません。
ブライダルプレイヤーはあくまで裏方ですので、参列者の目につかないスタッフ専用の通路や会場裏で出番まで待機することになります。
夏場は熱中症、冬場は体温の低下に注意しながら勤務しなければなりませんので、体力勝負の一面もある仕事といえます。
ブライダルプレイヤーになるには?必要な資格と求人の探し方
ブライダルプレイヤーになりたい人にとって、求人をどのように探せばよいのかは悩みどころとなるはずです。
必要な資格はあるのか、どのようなルートでブライダルプレイヤーの仕事に就けるのか、具体的な方法について確認しておきましょう。
ブライダルプレイヤーに求められる資格
ブライダルプレイヤーの仕事に就くにあたって、必須の資格はありません。
しかし、実際はブライダルプレイヤーとして演奏で収入を得ている人の多くが音楽大学や音楽系の専門学校を卒業しています。
ヤマハ音楽能力検定やプレイヤー検定を受検し、級を取得するのも1つの方法ですが、現実的には「音大卒」の経歴を求められるケースが大半と考えたほうがいいでしょう。
では、音大を卒業していればブライダルプレイヤーになれるのでしょうか。
実は、音大を卒業しても必ずしもブライダルプレイヤーの仕事に就けるとは限りません。
一例として、音大在学中からアルバイトでブライダルプレイヤーの仕事をはじめ、実務経験を積んでブライダルプロデュース会社などに採用されるケースがあります。
このように、ブライダルプレイヤーになるには必須の資格はないものの、特定の資格や学歴さえあれば必ず就くことのできる仕事ではありません。
「結婚式で演奏したい」と周囲に働きかけ、自らチャンスを探す主体性や積極性が求められます。
ブライダルプレイヤーの求人の探し方
ブライダルプレイヤーとして専任の演奏家を募集している求人は、実際にはほとんど存在しません。
音楽事務所やブライダルプロデュース会社に所属し、結婚式での演奏の仕事が入れば現地に赴くケースがほとんどです。
こうした事情を踏まえると、ブライダルプレイヤーになるには音楽事務所やイベント会社のオーディション情報を探すのが現実的でしょう。
あるいは、結婚式場やホテルに問い合わせ、ブライダルプレイヤーを派遣している音楽事務所を教えてもらう方法もあります。
経験を積むとフリーランスとしてブライダルプレイヤーの仕事を引き受けられるようになる人もいます。
フリーランスの場合、人伝手に演奏を依頼されるケースが多いことから、人脈づくりが重要になります。
強力な人脈を築いておかないと、切れ目なく演奏の依頼が入る状態にするのは難しいのが実情です。
さらに、結婚式というイベントの特性上、平日にはあまり仕事が入らず土日や祝日に依頼が集中します。
こうした事情から、ブライダルプレイヤーの仕事だけで生計を立てるのは難しいと考えられます。
フリーランスと言ってもブライダルプレイヤー専業ではなく、他の仕事も掛け持ちしながら活動する可能性が高いことを理解しておきましょう。
まとめ
ブライダルプレイヤーは結婚式という人生の一大イベントを演出するプロフェッショナルであり、非常にやりがいのある仕事です。
幅広いジャンルの曲を臨機応変に弾きこなす技術の高さに憧れる人も多いことでしょう。
一方で、演奏だけを担当すればいいのではなく、結婚式全体の演出に携わるには対応能力や情報収集力といった総合的な能力が求められます。
「音楽で人を幸せにしたい」といった思いのある方にとって、挑戦しがいのある職業といえるでしょう。
また、年代別に転職成功のポイントは下記の記事で詳しく解説しています。
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